ファンキージャム・ストーリー ニュージャック編 第2話

ダンスは出会いが大切

ダンススクールを始めるにはニューダンスの知識が必要です。基地のアンブラップ以外で情報を得るのは困難ですから入手方法を考えました。

アンブラップダンスは社交ダンス

その当時、一番近い基地は横田でした。いずれ横須賀基地には行かなくてはいけないと思っていましたが、横須賀は遠くNAVY(海軍)なので、若いブラザー(黒人男性)が多く、知らずに女性に近づくとトラブルになってダンスどころではなくなります。

その点、横田はARE FORCE(空軍)なので高学歴、年齢高めでトラブルは少ないのです。しかしダンスは今一です。

とりあえず横田で探して見ようと思い通うことを決めました。横田は空軍でエリートが多く基地内のクラブは白人志向なのを知っていましたから、基地周辺のブラックミュージック専門の店を手当たり次第に行って見ました。

私は常にブラザーと知りあう方法を考えていました。当然、昔の新宿時代のようにまずはブラザーと付合っている女性と友達になります。その頃にブラサガリなどのような言葉が生まれたのかはわかりませんが、ブラザーと付合う女性は多かったのです。

あきらかに日本男子よりは体格も格好も良かったですし、アフリカの黒人とは違い音楽や洋服のセンスが良かったのです。多くは格好が良いのが理由でしょう。しかしダンスが好きで付合う女性も多かったのです。私はそんな女性を探しました。

日本人でダンス上手は彼女達だからです。ダンスの上手なブラザーを狙って付合うのですから上手になります。それ以上の情報元はないからです。だから見ているだけの日本人の男性にダンス上手は皆無です。

兵隊の多くは男性ですし、日本男子が競争の激しいダンス上手のシスター(黒人女性)など永遠に付き会えないからです。

美人シスターと踊るのは夢!

アンブラップのダンス(ソウルダンス)は向かい合って一緒に踊ることで覚えるのですから相手がいないと駄目なのです。ダンスが好きなら誰でも上手くなる可能性はありますが、見ただけではわかりません。彼らもダンス相手にしてもらいたいとコッソリ練習していると聞いて驚きました。

アンブラップダンスの型は曲に合わせた特徴のある動きが多いのです。まずは流行の踊り型を覚えます。同系の型を混ぜてソウルフルに踊れるように練習します。

よりソウルフルに踊れるようになるには相手が上手でなければいけません。それでないと乗れないし楽しく踊れません。お互いにダンスで会話するようなものなのです。

だからブラザーもシスターもダンス上手と踊りたがるのです。見ただけで覚えると形の似せただけのディスコダンスのようになってしまいます。

何軒か通うとダンスミュージックの一番良い店に行き着きました。それからは同じ店で夕方から深夜まで、お客の観察を続けました。

早めの夕方に行くと女性同士で練習しているダンス上手がいました。その一人がAさんでした。理由を話し友達になってもらいました。(了解を得ていないので名前はふせます)

ダンスを少し見ればどの位踊れるかはお互いにわかりますので、一度でも一緒に踊れれば友達になれます。そして流行りのダンスを教えてもらいました。

ダンスを知るにはダンス上手のブラザーと友達にならないといけないのです。横田では不安でしたし、様子見で良いかなと思っていました。ところがAさんに合えて幸運でした。

私が知る日本人女性で最もダンス上手だと思います。女性の多くは幾つかのアンブラップダンスを覚えると自己流になり、スタンダードな型から外れて行きます。それは男性のようなスタイルの踊りでは印象が悪いからです。どうしても女性を意識させる踊り方になってしまうのです。

彼女は流行りのダンスを正確に踊っていて、ブラザーのスタイルだったのです。それでブラザーと友達になる必要がなくなりラッキーでした。それに女性と付合うにはアッシー君になったり、入店費用や飲食代の支払いも必要ですが、彼女は平均以上の収入を得ていましたので友達として付合えました。

彼女は仕事が終わると直ぐに来るので、彼氏が来る時間より早くなります。友達にダンスを教えたり一人で練習したりしていた時間があったのです。私も仲間にしてもらい流行りのダンスのチェックをしたのです。彼氏が来たら、「ハイ!さようなら」と店を出るような日々が続きました。

勿論、私も昼間は仕事しているわけですから、2時間以上かけて行くのは大変でしたが、深夜までには帰れたので助かりました。おかげでその頃の流行りのニューダンスを知ることができました。出会いに感謝しています。

ダンス上手は足がキレイ?


※ニューダンスとは

最新のアンブラップダンス(ソウルダンス)を指して当時使われました。アンブラップダンスはそれぞれに名称がある場合が多いのですが、ダンスが先に流行り名称が後になることが多くありました。

ダンスに興味がなく日本人と同じようにディスコダンスと認識していた黒人も多く、誰にでも通じた言葉ではありません。少数のアンブラップと日本のアンブラップダンス好きだけの隠語のような言葉です。

今、一般に知られているソウルダンス、ニューダンスの名称は1981年に私がファンキージャムを開校した時、雑誌、イベント等で使用したからです。

※ブラサガリとは

黒人男性と付合う日本女性のこと。日本女性が小さいので大きい黒人にぶら下がって見えたことから付いた言葉で差別用語と言えます。

当時のアンブラップのブラザーはダンス上手でGQ(新調した服)、おしゃれな人が多かったのです。相手にされなかったけど日本男子も白人女性と付合いたいと思っていたでしょう。